2024年に観たフィリピン映画

【旅の先に（A JOURNEY）】2023年

監督：RC・デロス・レイエス
キャスト：ケイ・アバド、パオロ・コンティス、パトリック・ガルシア


　39歳の誕生日を迎えたばかりのシェーン（ケイ・アバド／Kaye Abad）は、一度は克服したはずの癌が再発したことを知る。彼女を心から愛する夫のブライアン（パオロ・コンティス／Paolo Contis）は、もういちど治療に挑んでほしいと懇願するが、シェーンは治療をこばみ、死ぬまでにしておきたいことのリストを作成する。
　人気俳優であり、2人と幼なじみのトゥペ（パトリック・ガルシア／Patrick Garcia）は、ブライアンとともに彼女のリストの実現に協力し、3人で一緒にタスマニアの旅行に出るのだった。はたして、旅の先に待ち構えているものは……。

　正直、難病ものの映画は苦手なのだ。痛ましくて、切なくて、たまらない気持ちにさせられてしまう。どんなに登場人物が明るくふるまっても、そこかしこに悲劇の影が潜んでいて、つらい気持ちにさせられてしまうのだ。本作だって同様で、笑わせるシーンがあっても、そこに希望よりも切なさを感じてしまう。ほんと、苦手なのだ。
　しかし、そうであっても、映画としてのデキは非常にいい。夫婦の愛、友人による献身が細やかに描かれている。じっくり丁寧に描かれているので、それゆえに泣かされる。フィリピン映画お得意の家族の情愛もしっかり盛り込まれている。
　しかも、予想される展開にさらにもうひとつの爆弾が投げ込まれる脚本に、ガツンと打ちのめされてしまう。いや、この展開は辛すぎるでしょ。
　主役の3人は、それなりに映画やテレビシリーズに出ている俳優ではあるのだけれど、自分としてはまったく馴染みのない俳優ばかり。こういういささか地味な内容の映画には、あまり華のありすぎる人気スターよりも、この手の中堅どころの役者さんが向いているということなのだろうか。
　唯一知っているのは、国民的人気歌手であるオジー・アルカシッドが本人役で登場しているぐらい。彼の登場シーンが、これまた切なすぎる。
　ちなみに3人の子ども時代を演じている子役たちがやたらと美形で、これが成長するとあのおっさんたちになるのかと、いささか納得がいかないぞ。
　監督はNetflixで配信されている『霊媒は恋の始まり（Love the Way U Lie）』『アルター・ミー：心に耳を傾けて（Alter Me）』のRC・デロス・レイエス（RC Delos Reyes）。よほどNetflixに気に入られている監督なのだろうか。2023年以降ですでに7本の作品を監督しており、なかなかの売れっ子監督であるようだ。