2024年に観たフィリピン映画

【DEATH OF A GIRLFRIEND】2021年

監督：ヤム・ララナス
キャスト：ディエゴ・ロイザガ、AJ・ラヴァル



　学生のアロンソ（ディエゴ・ロイザガ／Diego Loyzaga）、森林警備隊員（アーノルド・レイエス／Arnold Reyes）、農夫（ラウル・モリト／Raul Morit）の3人が、警察署で取り調べを受けている。どうやら、アロンソのガールフレンドであるクリスティン（AJ・ラヴァル／AJ Raval）が殺害された事件に関する取り調べて、森林警備隊員と農夫が容疑者であるらしいことが徐々に分かってくる。しかし、互いに相手が犯人だと主張する森林警備隊員と農夫の供述、そしてクリスティンのボーイフレンドであるアロンソの供述は、微妙に食い違っていく。いったい、誰がどのような嘘をついているのか。はたして、何が真相なのか。
　映画は、3人の供述と、事件にいたる物語とが交互に描かれていく。
　街から越してきたアロンソは、通学のためのバス停でクリスティンという女学生と出会う。クリスティンは、バスを利用せずに森の中の近道を利用していた。クリスティンと一緒に森の中の近道を利用するようになったアロンソは、徐々にクリスティンと親しくなっていく。
　その通学途中でよく遭遇するのは、森林警備隊員の男と、森の中で違法な焚き木集めをしている農夫の男だった。森林警備隊員の男は、車で通りかかるたびにクリスティンを車に誘おうと声をかけてくる。農夫の男は、こっそり手に入れてきた大麻やマジックマッシュルームをアロンソに売ろうと持ちかけてきていた。
　やがて、恋人同士となったアロンソとクリスティンだが、悲惨な事件が発生する……。
　最初は、どんな事件が起きたのかすら明らかにしないまま取り調べと、過去の映像とが交互に描かれていく。とはいえ、映画のタイトルが「DEATH OF A GIRLFRIEND」なので、クリスティンが殺害される事件なのだろうということは、簡単に予想がつく。
　尋問の場面は、取調官の視点から描かれ、取調官を演じているソリマン・クルーズ（Soliman Cruz）は最後まで声でしか登場しない。
　取調官に対するそれぞれの供述があり、それが映像となって再現されていく。そのため、まったく同じ場面が、それぞれの立場から微妙に異なる意味を持つ映像として再現されていくのだ。
　とはいえ、すれっからしの映画ファン、ミステリファンなら、最後に明らかになる真相に驚かされることはないだろう。映画はそのあたりを非常にうまく処理してはいるのだけれど、それ以外に驚くような展開はありえないので、途中でだいたい予想がついてしまう。
　監督はフィリピンホラー映画の巨匠、ヤム・ララナス（Yam Laranas）。日本で観られる作品には、『ホスピタル・オブ・ザ・デッド　閉ざされた病院』『ザ・アブノーマル』『オーロラ 消えた難破船』などがあるが、『Rooftop』『Greed』『NIGHTSHIFT』など、なかなか精力的にホラー映画、サスペンス映画を撮り続けている監督だ。
　本作は、主要な登場人物の4人以外に登場する役者は、声だけの出演の取調官、取調室に出てくる警察官2名のみ。しかも、撮影に使われる場所は、取調室と森の中だけ。究極の低予算映画なのだ。こうしたところも、ベテラン、ヤム・ララナスのうまいところなのだろう。
　役者についていうと、クリスティンを演じているAJ・ラヴァルがとにかく可愛い！　AJ・ラヴァルというと、どうしてもビバフィルムのエロティックムービーというイメージになってしまうのだけれど、裸にならなくても充分に魅力のある女優だと思っている。売り出すきっかけとして裸になったのだとしても、これからは裸を売り物にしなくても充分にやっていけるのではないだろうか。アロンソとつきあいだしたあたりの笑顔が、とにかく魅力的なのだ。
　アロンソを演じているディエゴ・ロイザガの代表作は、売り出し中の若手スターが顔を揃えたホラー映画『Bloody Crayons』、ダリル・ヤップ監督の問題作『Maid in Malacañang』など。