2023年に観たフィリピン映画

【アルター・ミー：心に耳を傾けて（Alter Me）】2020年

監督：アールシー・デロス・レイエス
キャスト：エンチョン・ディー、ジャスミン・カーティス・スミス


　「アルターワールド」というアダルト系SNSに誰も彼もがはまっていて、そこで気軽にセックスの相手を探している。人間不信に陥り、職場でのコミュニケーションにも支障をきたしているエイミー（ジャスミン・カーティス・スミス／Jasmine Curtis-Smith）は、同僚にそそのかされてその「アルターワールド」で人気№１の男性エスコートを予約するのだが、ホテルにやってきた彼は大学の同級生のウノ（エンチョン・ディー／Enchong Dee）だった。
　エイミーは人間不信を乗り越えるための相談役としてウノを雇うのだが、いつしかウノはエイミーのことを心から愛するように。そして、とうとうエイミーに愛を打つ明けるのだが、そこに現れたのがエイミーの元カレのエルネスト（ジェイシー・サントス／JC Santos）だった。

　どうもピンとこなかった。エイミーが「アルターワールド」を通じてセックスの相手の男性を買うという行動が発端になるのだけれど、そういうことをするキャラクターというように見えない。そして、ウノは「アルターワールド」でセックスを売り物にする人気№１の男性なわけだけれど、これまたそういうキャラクターには見えない。
　そして、このふたりの純情な恋愛物語に展開していくのだけれど、お互いに気持ちを言い出せない純愛関係のわりにはセックスはするんだよね。このあたりのふたりの気持ちがぜんぜんわからない。
　とうとう自分の気持ちに素直になったウノが愛を打ち明けると、そこに元カレが現れて、あっさりそっちになびくエイミー。実はその男に裏切られて人間不信になっていたのに、なにその展開。しかも、必死にいいよるウノに対して「あなたとの関係はアルターワールドの中だけなの。現実ではなんの関係もないの！」とつきはなすエイミー。いや、それまで君のことを親身になって心配して、あれこれアドバイスしてくれて、それで職場の人間関係もよくなって出世したというのに、その言いぐさはないんじゃない。
　それでいて、いつの間にか元カレがめちゃくちゃ物わかりのいい人間になっていて、「自分は君のことを心から愛しているけれど、君はウノのことを愛しているんだ。その愛を追いかけなくちゃダメだ」とか言いだして、どうしてそういう展開になるのか、まったく理解不能。
　ラストシーンが、これまた微妙に意味不明だったりする。

　というわけで、自分的にはまったくダメダメな作品だったのだけれど、ジャスミン・カーティス・スミスはとっても美人だった。大好きなアン・カーティスの妹なのだけれど、本作を観るとアン・カーティスより美人なのではと思えてきてしまう。代表作は、東京フィルメックスで上映された『トランジット（Transit)』、大阪アジアン映画祭で上映されたサマンサ・リー監督の『たぶん明日（Baka Bukas）』、ポール・ソリアノ監督の『Siargao』など。ちなみに、本作のプロデューサーのひとりがそのポール・ソリアノ監督だったりする。
　そして、ウノを演じているのがエンチョン・ディー。すらっとした細面の二枚目で、エイミーに容赦なく振られたあとの号泣がなかなかの熱演だった。代表作は、4人の美人の姉がなんとしてでも弟の結婚を阻止しようとする『結婚なんて許さない！（Four Sisters and a Wedding）』で、この作品のせいで自分の中では可愛い弟キャラというイメージが定着していたのだけれど、それから7年もたてば、もちろん大人のいい男になっているわけですね。彼は僕の熱愛するエリッチ・ゴンザレスとの共演作が多いので、てっきりいい仲なのかと思っていたら、エリッチ・ゴンザレスは昨年、別の男性と結婚してしまったのでした。
　エイミーの元カレを演じているのはジェイシー・サントス。東京国際映画祭で『モーテル・アカシア（Motel Acacia）』が上映された時に来日していて、その時にサインをもらったり一緒に写真を撮ったりしているので、なんとなく親近感を持っている役者さんだ。『Miracle in Cell No. 7』などでも、実にいい味のキャラクターを演じている。
　あと、ウノの妹のトレス役で出ているのが、なんとエリック・マッティ監督の『Seklusyon』、ウェン・Ｖ・デラマス監督の『生き人形マリア（MARIA, LEONORA, TERESA）』といったホラー映画に出ていたレッド・ブスタマンテ（Rhed Bustamante）。本作ではまだまだ子どもという感じなのだけれど、最近ではすっかり美少女となった写真をFacebookなどにアップしていたりする。

　監督はアールシー・デロス・レイエス（RC Delos Reyes）。ポール・ソリアノ監督が製作にかかわっている『Mary, Marry Me』『霊媒は恋の始まり（Love the Way U Lie）』などを監督している。