2021年に観たフィリピン映画

【Love Is Color Blind】2021年

監督：ジョン・レオ・ガルシア
キャスト：ベル・マリアノ、ドニー・パンギリナン




　香港での就職に失敗したカラ（ベル・マリアノ／Belle Mariano）はフィリピンに戻り、親友のイノ（ドニー・パンギリナン／Donny Pangilinan）と再開する。カラは以前からイノのことを愛しているのだけれど、ずっとそのことを隠して「私たちは大親友」と言い張っていた。
　イノは画家の両親の愛に包まれて育ち、自らも画家を目指していたが、外に愛人を作った父は家を出て行き、そのことで心を病んだ母を抱えてつらい日々を過ごしていた。だが、交通事故によって母は命を落とし、イノ自身も色覚異常となってしまう。すべての色を認識できなくなり、彼の世界はグレイ一色となってしまったのだ。そのために、画家の道も閉ざされ、バイト先でもミスを繰り返し、まともに仕事に就くこともできないでいた。
　そのイノのもとに亡き母の作品の展示会の話が持ち込まれ、遺作となった製作途中の絵を展示会の目玉としてイノに仕上げて欲しいと依頼される。色を見分けることのできないイノは何度も断るのだが。
　そこに、ギャラリーのキュレーターであるアイリス（アンジェリーナ・クルーズ／Angelina Cruz）が現れる。初めて彼女を観た時、イノはアイリスの服装に鮮やかな赤を見る。そのことで自分の色覚異常が治る希望を持つイノ。イノはアイリスの手助けを得て、母親の絵を仕上げようと決意するのだが、そのことで親密になっていくふたりを見て、カラはいてもたってもいられない。
　一方、ふたりのかつての同級生だったスカイ（ジェレマイア・リスボ／Jeremiah Lisbo）がアメリカから帰ってきて、カラの前に現れる。スカイは昔からカラのことを愛していたのだった。

　テレビシリーズ『He's Into Her』の大ヒットによって一躍トップスターとなったベル・マリアノとドニー・パンギリナンのカップルを主演に起用した青春映画で、いまいちばん勢いのあるこのふたりを見ているだけで十分に楽しめる。フィリピン芸能界では、人気のある男女の組み合わせをラブチームと呼んでペアで起用することが多いのだけれど、このふたりもドンベルというニックネームがすでに定着しており、今年いちばん人気のあるラブチームとなっている。
　ベル・マリアノは、なによりも笑顔が可愛らしい。つらいことがあろうとも、笑顔で乗り越えていく陽性のキャラクターがよく似合う。それゆえに、打ちのめされて涙にくれるような場面になると、その痛々しさが胸にキュンと迫ってくる。
　一方のドニー・パンギリナンはというと、愁いのある瞳が印象的で、どちらかというと静かなキャラクターがよく似合う。つらいことがあっても、じっと耐えるようなキャラクターが似合うのだ。『He's Into Her』の時には、最初のうちはワガママでバカな悪ガキを演じながらも、本当はもっと誠実な男なんだよという微妙なニュアンスが滲み出ていたのがよかった。
　そんなふたりの本格的なラブチームとしての映画デビューが本作なのである。

　ふたりのかつての同級生として登場してくるスカイを演じているジェレマイア・リスボは、実は『He's Into Her』でもまったく同じ立ち位置のキャラクターを演じている。ベル・マリアノ演じるキャラに惚れていながら、ドニー・バンギリナン演じるキャラに彼女を譲らざるを得ないという、ちょっと切ない役どころだ。なかなかのハンサムで、最新作はキャシー・ガルシア・モリーナ監督の『Love at First Stream』。これからもっと人気の出てくる男優だろう。
　アイリスを演じていたアンジェリーナ・クルーズは、本作がデビュー作。すっきりした顔つきの美人だが、父はセサール・モンタノ、母はサンシャイン・クルーズというサラブレッドだ。まだ20歳と若いのだけれど、本格的に芸能活動を続けるのなら、こちらもどんどん人気が出てくることだろう。

　監督のジョン・レオ・ガルシア（John Leo Garcia）は、数多くのヒット作のライン・プロデューサーを担当してきた人物で、本作が監督第１作となる。本作では、フィリピン最大のヒットメーカーであるキャシー・ガルシア・モリーナ監督がライン・プロデューサーを担当しているのだけれど、キャシー・ガルシア・モリーナ監督の多くの作品を支えてきた人物であるようだ。