2021年に観たフィリピン映画

【He's Into Her The MOvie Cut Part2】2021年

監督：チャド・ヴィダネス
キャスト：ベル・マリアノ／ドニー・パンギリナン



　一度は仲良くなったと思ったマックス（ベル・マリアノ／Belle Mariano）とデイブ（ドニー・パンギリナン／Donny Pangilinan）だが、ささいなことでケンカをしてまたしても仲違いしてしまう。それでも、学園人気ナンバーワンのデイブに近づくマックスをこころよく思わない一派がいて、マックスは何者かに襲われて病院に担ぎ込まれることに。
　これをきっかけにマックスとデイブはまた仲直りをする。
「君と一緒なら自分はよりよい人間になれる。いや、君と一緒なら自分は最良の人間になれる」と言うデイブに、「いまと違う人間になる必要はないから、ありのままのあなたでいてほしい」とマックスは答える。そして、デイブはありのままの自分を理解してもらうために、昏睡状態にある兄のもとにマックスを連れて行き、兄が銃で撃たれた原因は自分にあるのだと告げる。それが原因で母はデイブを見はなし、デイブはそれからずっと罪の意識にとらわれていたのだった。
　一方、マックスのかつての恋人のRJがアメリカから帰ってきているという情報がマックスにもたらされる。ミンドロ島に住んでいる頃の恋人だが、家族とともにアメリカに渡っていたのだった。しばらくはメールのやりとりが続いていたのだが、ある時からパッタリとメールの返事が来なくなり、マックスはそのことでひどく傷ついていた。
　また、学園を離れていたデイブのかつてのガールフレンドも学園に戻ってくる。彼女はいちどは手ひどくデイブを振ったにもかかわらず、またしてもデイブに近づいてくる。
　過去の恋人の登場で、またしてもふたりの間に暗雲が立ちこめるのだが……。

　途中で40分ほど英語字幕が出なくなってしまい、微妙な場面の意味が理解できなかったのがなんとも悔やまれるのだが、相変わらず脳天気なラブコメディのようでいて、泣かせる場面をきっちり用意するのがさすがはフィリピン映画だ。
　兄が昏睡状態に陥った理由を説明してデイブが号泣する場面、最初はいじわるなキャラクターで登場していたマックスの義理の姉が、ある事件をきっかけに心から改心して号泣する場面、アメリカから連絡をとれなくなったやむを得ない事情を語ってRJがマックスに復縁を迫る場面などなど、とにかく泣かせの場面になるとやたらとテンションが高くなる。そして、最大の泣かせはというと、デイブと母親が互いに許しを求めて抱き合う場面だ。これぞフィリピン映画。
　しかし、トラブルが原因で家を出て行ったマックスの義理の母と姉のその後のエピソードがないのはどうしたことなんだろう。絶対にこの和解の場面で盛り上がるはずと思っていたのに。

　主役のベル・マリアノは、映画デビューがミカイル・レッド監督の『レコーダー（Rekorder）』で、その後、テレビドラマと並行して『Can't Help Falling in Love』『Love You to the Stars and Back』『James & Pat & Dave』などの映画に出演。
　一方のドニー・パンギリナンは『Fantastica』『The Mall, the Merrier!』『James & Pat & Dave』などの映画に出演。
　ふたりとも僕の観たことの映画にきっちり出演しているのだけれど、主役ではなかったのでぜんぜん記憶に残っていなかった。最新作はこのふたりが共演する『Love is Color Blind』で、新たなるラブチームとして人気が高まっているところなのだろう。
　また、マックスの友人たち、デイブのチームメイトにもいろいろと個性豊かなキャラクターが登場してきていて、きっとここから明日の青春ドラマのスターが生まれてくるのだろう。その中の最大の注目株はというと、日本人のカオリ・オイヌマだろう。これまではテレビシリーズのみで活躍していた彼女だが、本作をきっかけとして人気が出て、次回作はというとキャシー・ガルシア・モリーナ監督の『Love at First Stream』なのである。これは楽しみだ。

　監督は新鋭のチャド・ヴィダネス（Chad Vidanes）。本格的な監督デビューはテレビシリーズ『He's Into Her』全10話で、今回はそれを再構成した本作で映画監督デビューを果たしている。