2021年に観たフィリピン映画

【Block Z】2020年

監督：ミカイル・レッド
キャスト：ジュリア・バレット、ジョシュア・ガルシア



　大学構内にある病院に、足を人間に噛まれたとおぼしき患者が運び込まれてくる。最初は単なる軽傷と思われたが、あっという間に症状が悪化して死亡してしまう。だが、悪夢が始まるのはそれからだった。
　遺体安置所に運ばれたその患者が生き返り、その場にいた学生の首を噛みちぎり、噛まれた学生も他の学生たちに襲いかかるようになってしまう。次々と血まみれの連鎖が広がっていき、大学構内のいたるところに惨劇が繰り広げられていく。
　しかも、大学の外に逃げようとすると、外部への感染を恐れた軍隊が大学を封鎖し、突破しようとする学生をかたはしから射殺していくのだ。
　医学部の学生であるPJ（ジュリア・バレット／Julia Barretto）は、ボーイフレンドのルーカス（ジョシュア・ガルシア／Joshua Garcia）、友人のエリカ（マリス・ラカール／Maris Racal）、マイルス（マッコイ・デ・レオン／McCoy de Leon）、父親のマリオ（イアン・ヴェネラシオン／Ian Veneracion）らとともに生き延びる道を探るのだが……。

　いやあ、面白かった。これを日本で劇場公開しないのはもったいないぞ。ウイルスで感染するゾンビというテーマは、新型コロナウイルスに苦しむ現実とみごとに重なるのだけれど、フィリピンで本作が撮影されたのは新型コロナウイルスの問題が表面化する直前で、かろうじて映画館が閉鎖される前に劇場公開もされている。
　監督は『バードショット』『ネオマニラ』などのミカイル・レッド（Mikhail Red）。このミカイル・レッド監督については、「まだまだ熱中！フィリピン映画」で一章を費やして紹介しているので、ぜひご一読願いたい。
　主演は『愛して星に（Love You to the Stars and Back）』『Vince & Kath & James』などのジュリア・バレットとジョシュア・ガルシアという、いま最も人気のあるラブチームだ。しかし、まさかこの２人の主演でゾンビ映画を撮るとは思いもしなかったぞ。さすがはミカイル・レッド監督だ。
　ちなみに主演の主演のひとり、ジュリア・バレットは、以前から藤谷文子によく似ていると思っていたのだけれど、本作ではさらにその思いを強くしてしまった。ぽってりした唇がなんとも特徴的な女優さんなのだ。
　また、ヒロインの友人役で出ているマリス・ラカールが実に可愛い。以前から注目していた若手女優のひとりではあるのだけれど、これからまだまだ人気が出てくるに違いあるまい。
　なお、世界中で大ヒットをとばした韓国映画『新感染　ファイナル・エクスプレス』以来の新しきゾンビ映画の伝統にのっとって、この映画のゾンビの動きも実に機敏である。獲物を見つけるやいなや、あっという間に四方八方からすごい勢いで襲いかかってくるのだ。

　ところで、本作をどうやってみたかというと、アマゾン・プライム・ビデオにあったのである。レンタルで199円。「オーディオ言語：English」とあるが、前にもそれに騙されているので、タガログ語で英語字幕なしを覚悟していたのだけれど、なんと日本語字幕がついていた。
　が、その日本語字幕がすごかった。おそらくは、日本語の知識のない人が英語字幕を翻訳ソフトにぶちこんだものをそのままつけたのだろう。とにかく意味の通じない日本語の羅列なのだ。あるいは、かろうじて日本語の文章として意味が通じたとしても、映画の場面にまったくそぐわない日本語だったりするので、実にイライラする。この日本語字幕だったらない方がまだマシというものである。ところが、この日本語字幕をオフにすることができないのだ。もれなく、このめちゃくちゃな日本語字幕がついてきてしまうのである。
　また、耳の不自由な人向けに効果音なども字幕で説明しているのだけれど、その日本語が「ズボン　ズボン　ズボン」だったりして、いったい元の英語はなんだったのだろうかとひたすら首をかしげる。いやあ、まいった。