2020年に観たフィリピン映画

【The Achy Breaky Hearts】2016年

監督：アントワネット・ハダオネ
キャスト：ジョディ・サンタ・マリア、イアン・ヴェネラシオン、リチャード・ヤップ




　30代で独身のチンガイ（ジョディ・サンタ・マリア／Jodi Sta. Maria）は、まわりから繰り返し「いつ結婚するの？」とプレッシャーをかけられることにうんざりし、同世代のシングル女性と飲み会を企画してはグチをこぼす日々を過ごしていた。
　そんな彼女のもとに、ライアンという1人の男性（イアン・ヴェネラシオン／Ian Veneracion）が現れる。彼女の勤務する宝石店にガールフレンドにプレゼントする指輪を買いにきたものの、そのガールフレンドから別れを告げられ、買った指輪が宙に浮いてしまったという男性だった。やたらと不器用なライアンの騒動に、なぜか巻き込まれていくチンガイ。
　そんなある日、彼女の前に現れたのが昔のボーイフレンドのフランク（リチャード・ヤップ／Richard Yap）だった。かつて、一方的にチンガイの元を去って彼女を傷つけたフランクだったが、ふたたび彼女とよりを戻したいと言ってくる。
　突如としてふたりの男性に言い寄られることとなってしまったチンガイ。自分はどちらの男性を愛しているのだろうか？　どちらの男性を選ぶべきなのだろうか？　ふたりの男性とつきあいながら、決断できずにいるチンガイなのだけれど…。

　監督は『That Thing Called Tadhana』『Love You to the Stars and Back』などのアントワネット・ハダオネ（Antoinette Jadaone）。今年の東京国際映画祭で最新作の『ファンガール（Fan Girl）』が上映されるので、未見だった作品をなるべく見ておこうと思って手を出した次第。
　正直言うと、いまいち僕の好みの作品ではなかった。そもそもが、主人公と同世代の女性をターゲットした作品なのだろうから、僕あたりがのめりこんで喜ぶわけがないのだけれど。また、セリフとモノローグが多いので、英語字幕にまるっきり追いつけなかったのも、作品評価にマイナスに作用しているかとは思う。そこらへんは、彼女が注目されるきっかけとなった『That Thing Called Tadhana』あたりと一緒。
　ロマンティック・コメディが好きだというハダオネ監督らしい作品ではあるのだけれど、このあとで撮ることになる『Love You to the Stars and Back』『Never Not Love You』『Alone/Together』あたりに比べると対象年齢はいささか上ということになるのだろう。とはいうものの、『Never Not Love You』『Alone/Together』は未見なので、なんとか観なければ。　

　主演のジョディ・サンタ・マリアは、本来はキュートな美人女優なのだけれど、本作ではいかにも「男性には縁がありません」と言わんばかりのカタブツっぽいメガネをかけていて、いわゆるオールドミスそのもののイメージを体現している。そんな彼女が、突如としてモテモテになって嬉し恥ずかしとなるところが可愛いのだけれど。
　イアン・ヴェネラシオンは、フィルモグラフィを見ると、芸歴の長いベテランで、いままでに彼の出ている作品を何本も見ているはずなのに、まったく記憶になかった。いかにも不器用そうな雰囲気たっぷりだ。
　一方のリチャード・ヤップはというと、『The Amazing Praybeyt Benjamin』でのヴァイス・ガンダの上官役が印象に強いが、長編映画は本作がまだ7本目だったのだね。こちらは知的でクールな男性というイメージがよく似合い、イアン・ヴェネラシオンとは実に対照的だ。