2020年に観たフィリピン映画

【Mission Unstapabol: The Don Identity】2019年

監督：マイケル・ツヴィエラ
キャスト：ヴィク・ソト、メイン・メンドーサ




　2019年のクリスマスシーズンに公開されたフィリピン映画『Mission Unstapabol: The Don Identity』を観る。
　主演は数多くのコメディ映画に出演している人気俳優のヴィク・ソト。共演は前年のクリスマス映画『Jack Em Popoy: The Puliscredibles』でもヴィク・ソトと共演しているメイン・メンドーサ。監督は同じく『Jack Em Popoy: The Puliscredibles』のマイケル・ツヴィエラ（Michael Tuviera）。となると、期待しちゃうよなあ。というか、マイケル・ツヴィエラ監督作品だから観たんだし。

　ドン･ロバート（ヴィク・ソト／Vic Sotto）は、世界で最も大きな真珠「パール・オブ・ザ・オリエント」を盗み出すことに成功するが、義弟のドン・ベンジャミン（ホセ・マナロ／Jose Manalo）によって真珠は奪われ、さらには真珠の持ち主である考古学者アーサー・メンデス（トントン・グティエレス／Tonton Gutierrez）の殺害犯に仕立て上げられて投獄されてしまう。
　20年がたってようやく刑務所から出されたロバートは、ベンジャミンに復讐し、殺人犯の汚名を晴らすためにかつての仲間を召集する。
　最後までロバートに付き従ったドライバーのドン・キコング（ジェルソン・ベイ／Jelson Bay）、プロレスラーのドン・ジョンソン（ジェイク・クエンカ／Jake Cuenca）、手品師のドン・ズルエタ（ポクワン／Pokwang）。さらに、ハッキングの専門家としてドナ・クルーズ（メイン・メンドーサ／Maine Mendoza）が仲間に加わるのだが、実は彼女の正体はロバートに殺された（ということになっている）考古学者の娘のクレアであった。彼女は、自分の父を殺したロバートが釈放されたことが許せず、ふたたび刑務所に送り込むために仲間に加わったのだった。
　一方、ロバートを裏切った義弟のベンジャミンは、いまでは実業家として成功し、数多くの美術品の展示を手がけていた。そして、その中に因縁の「パール・オブ・ザ・オリエント」も含まれていた。ロバートは、仲間とともに、その「パール・オブ・ザ・オリエント」を再び盗みだす計画を練り上げていく。
　はたして、ロバートたちは幾重ものセキュリティシステムをかいくぐって真珠を盗むことができるのだろうか？　彼を陥れたベンジャミンに対する復讐を成し遂げることができるのだろうか？　そして、ロバートをふたたび刑務所に送り込もうとするクレアの計画はどうなるのだろうか？

　などとストーリーを紹介すると、いかにもまっとうなサスペンスアクションのような印象を与えてしまうかもしれないが、けっこうトホホなアクションコメディというのが実態であった。『Jack Em Popoy』のミカエル・ツヴィエラ監督の作品ということで期待した僕がバカだった。『Jack Em Popoy』はココ・マルティン主演ということで映画会社としても力が入っていたのだろう。今回はそのココ・マルティンが出ていないのだ。そしたら、すっかりいつものヴィク・ソト主演映画に戻ってしまっているではありませんか。
　とはいうものの、「エンテン・カビソテシリーズ」ほどの脱力映画ではない。ヴィウ・ソトは『Jack Em Popoy』で味をしめたのか、すっかりシリアスなヒーローを演じているである。でも、それでも、テイストはいつものヴィク・ソトの映画になってしまっているのだけれどね。
　しかも、共演のメイン・メンドーサが『Jack Em Popoy』ほど魅力的ではないのだ。『Jack Em Popoy』の陽性なキャラクターはすごくよかったんだけどなあ。

　ちなみに、いちばん笑ったギャグは、ロバートの腹心であるドン・キコングがズルエタに自己紹介するシーン。
「オレの名前はドン・キコングだ」
「ドンキー・コング？」
「ドンキー・コングじゃねえよ。ドン・キコングだ」
「ドンキー・コング？」
　ジェイク・クエンカ演じるドン・ジョンソンてのは、「マイアミ・バイス」のドン・ジョンソンを意識しているのかなあ？　というか、なんで登場人物の名前にいちいち「ドン」がつくんだ？

　いちばんトホホだったのは、『ミッション・インポッシブル』以来のお約束となっているレーザー光線のセキュリティをかいくぐるシーン。ジョンソン、ズルエタ、ロバートの3人が交代で踊りながらレーザー光線をくぐり抜けていくのだけれど、緊張感はもちろんないし、笑えるわけでもないし、いやあ困ったもんだ。
　あと、クレアが偽名で使うドナ・クルーズ（Donna Cruz）というのは、フィリピンの有名な歌手の名前で、この映画の主題歌を歌っていたりもするのだけれど、これもギャグなのかなあ？
　ちょっと嬉しかったのは、ベンジャミンのボディガードを菜々緒似の長身の美人、サラ・ラバティ（Sarah Lahbati）が演じていて、彼女とメイン・メンドーサとのタイマン勝負が観られるというところ。アクションそのものはたいしたことはないのだけれど、美人女優のバトルシーンというだけで嬉しくなってしまうのだ。

　ズルエタを演じているのは『My Illegal Wife』『Wang Fam』なでの主演で知られるコメディエンヌのポクワン。『A Mother's Story』『Edsa Woolworth』といった作品でシリアスな演技も見せているが、本作ではトホホなキャラクターをめいっぱい演じてくれている。
　ジョンソンを演じているジェイク・クエンカは『Ang panday』『Eerie』などで、ちょっと印象に残るキャラクターをやっていたのだけれど、コメディはそれほど得意ではないのか、今回はちょっと印象が薄い。
　そして、ドンキー・コング…じゃなくてドン・キコングを演じているジェルソン・ベイというのは、「エンテン・カビソテシリーズ」からずっとヴィク・ソトの子分みたいな役を演じ続けている俳優で、相変わらずヴィク・ソトの脇でしょうもない役を演じ続けているのでした。