2020年に観たフィリピン映画

【Between Maybes】2019年

監督：ジェイソン・ポール・ラクサマーナ
キャスト：ジェラルド・アンダーソン、ジュリア・バレット




　かつて子役として一世を風靡した女優のヘイゼル（ジュリア・バレット／Julia Barretto）。このところ、その人気に陰りがあり、両親からのプレッシャーにも耐えきれなくなって、行き当たりばったりの航空券を手配して現実からの逃避をはかる。自分のことを知っている人間のいないところに行きたかったのだ。その結果辿り着いたのが、日本の佐賀県の人里離れた港町だった。
　そこで彼女は、観光客相手の食堂で働くルーイ（ジェラルド・アンダーソン／Gerald Anderson）と出会う。10歳の時に両親と日本にやってきたが、両親は不法滞在がばれて強制送還され、彼だけが親戚のもとに残されて日本で育ったというフィリピン人だった。
　言葉の通じない異国で途方に暮れていたヘイゼルは、なにかとルーイに頼るのだが、それまで人気女優としてのわがままを許されてきたヘイゼルは、ルーイに対しても同様にふるまってしまう。それゆえ、いったんはヘイゼルを残して離れようとするルーイだった。しかし、どうしても彼女を見捨てることができず、空き家を買い取って暮らしている自分の家に彼女を連れ帰るのだった。
　やがて、ヘイゼルはルーイに対して心を許すようになり、互いに好意を抱くようになるのだが…。

　佐賀フィルムコミッションが全面的に日本ロケを支援した作品で、佐賀県の太良町というところが主要な舞台になっている。もちろん日本人もたくさん出てきて、日本語が飛びかい、日本で育ったという設定のジェラルド・アンダーソンもなかなか頑張って日本語を使ってくれている。なんだか、それだけで嬉しくなってしまう。
　また、この手の映画でよく観られる珍妙な日本という場面がまったくなかったのも嬉しかった。スタッフがちゃんと日本の文化風習をリサーチしてくれたのだろうし、佐賀フィルムコミッションでもしっかりアドバイスしたのだろう。

　主演のジェラルド・アンダーソンは、相変わらず誠実さを絵に描いたようなキャラクターがめちゃくちゃ似合っている。わがままな子役上がりの女優に振り回される役がぴったりなのだ。
　で、その子役上がりのわがままな女優を演じているのが、『Vince & Kath & James』『Love You to the Stars and Back』で一気に若手の人気女優となったジュリア・バレット。ポッテリした唇がチャームポイントで、ちょっとだけ藤谷文子に似ていると思ってしまった。なかなか魅力的な女優である。最新作はミハイル・レッド監督の学園ゾンビ映画『Block Z』。これは、ネットフリックスで配信されるらしいので、楽しみだ。

　監督は『The Third Party』『Love Is Blind』のジェイソン・ポール・ラクサマーナ（Jason Paul Laxamana）。なかなか手堅い映画作りをする監督と見た。
　いまいちこの手の映画によくあるパターンの終わり方ではあるのだけれど、ちょっとしんみりさせてくれるいいエンディングだ。

　ちなみに、佐賀フィルムコミッションでは、積極的に映画ロケの誘致をおこなっているようで、フィリピン映画では他にジーアン・リム、ルイス・デ・ロス・レイエス主演の恋愛映画『Hanggang kailan?』、リッツ・アズール、ジョセフ・マルコ、マイルズ・オカンポ主演のホラー映画『The Missing』の撮影もおこなわれている。
　『Hanggang kailan?』はいつも利用しているフィリピンの映画配信サイトにあるのだけれど、残念ながら英語字幕がついていないのでパスしているんだよなあ。観たい作品ではあるのだけれど。
　『KITA KITA』のヒットで北海道を訪れるフィリピン人がものすごく増えたということなので、こうした映画で佐賀県を訪れるフィリピン人が増えるといいのだけれど。