2019年に観たフィリピン映画

【結婚なんて許さない！（Four Sisters and a Wedding）】2013年

監督：キャシー・ガルシア・モリーナ
キャスト：トニ・ゴンザガ、ベア・アロンゾ、エンジェル・ロクシン、シャイナ・マグダヤオ




　テディ（トニ・ゴンザガ／Toni Gonzaga）、ボビー（ベア・アロンゾ／Bea Alonzo）、アレックス（エンジェル・ロクシン／Angel Locsin）、ガビー（シャイナ・マグダヤオ／Shaina Magdayao）の4姉妹は、末の弟CJ（エンチョン・ディー／Enchong Dee）が結婚するというので、急遽、実家に集結する。
「弟はまだ若すぎる」「相手は弟にふさわしい女性ではないに決まっている」「弟は結婚がどういうことなのかわかっていない」
　あれこれ理由をつけて、結婚を阻止すべく行動を開始する4姉妹。みな、可愛い弟のことが心配でならないのだ。可愛い弟を、見も知らぬ女性に渡したくないのだ。だけど、当のCJにしてみれば実にもって余計なお世話としか言いようがない。
　しかも、CJの婚約者プリンセス（アンジェリン・クイント／Angeline Quinto）の家は、父親が大実業家の大金持ちで、しかも母親が桁外れのエキセントリックな性格をしていて、それがまた4姉妹は気に入らない。なんとしてでもこの結婚を阻止すべく、姉たちは暴走してしまうのだったが…。

　ヒットメーカー、キャシー・ガルシア・モリーナ（Cathy Garcia-Molina）監督の2013年の作品である。
　本作の最大の売りは、なんといっても美人女優4人の共演と言えよう。長女のテディを演じているのが、『You're My Boss』『Starting Over Again』などのトニ・ゴンザガ。次女のボビーを演じているのが、『Eerie』『A Second Chance』などのベア・アロンゾ。三女のアレックスを演じているのが、テレビシリーズ『Darna』で一世を風靡したエンジェル・ロクシン。四女のガビーを演じているのが、ラブ・ディアス監督の『悪魔の季節（Ang panahon ng halimaw）』や『肝っ玉母ちゃん（Ang Tanging Ina）』などのシャイナ・マグダヤオ。なんともはや、豪華なメンバーが顔を揃えているのだ。
　特に「かわいい！」と思ってしまったのがエンジェル・ロクシン。いままで彼女の主演映画は『Everything About Her』ぐらいしか観ていなかったのだけれど、すっごく可愛いじゃん。

　しかも、基本設定だけだとシンプルなコメディとしか思えないのだけれど、さすがはモリーナ監督、4人それぞれの設定にも凝っていて、お互いに諍いがあったり、すれ違いがあったりと、シリアスな家族ドラマとしての一面も持たせているのだ。
　長女のテディはスペインで教師をしていると家族に偽っているのだけれど、実は不況のために教師の職を失い、いまではバーのウェイトレスをしたり家政婦をしたりしている。しかし、家族の誇り、優秀な長女という家族の期待を裏切ることができず、どうしても真実を家族に告げることができないでいた。あるいは、ニューヨークで働く次女のボビーは、トリスタン（サム・ミルビー／Sam Milby）という男性から求婚されているのだが、過去にこだわって結婚に踏み切ることができないでいた。また、映画界で働く三女のアレックスは、かつてボビーの恋人だった歌手とつきあっているのだが、そのためにボビーとの間がギクシャクしてしまっていた。そして、四女のガビーは自分だけが家に残り、母親の世話をしながら教師をしているのだった。
　そうした設定から人間ドラマが生まれ、そして最後はもちろん、自分の非を詫び、お互いを認め合い、家族の絆が深まるといういつものパターンにつながっていく。だけど、その部分がめちゃくちゃ盛り上がってしまうのだ。さすがはフィリピン映画。さすがはモリーナ監督。
　ラストの着地も実にお見事で、とても心地のよいコメディ映画に仕上がっている。

　ところで、『タブー　－禁断のウェディング－（Sukob）』を観た時に、家族が同じ年に結婚するとどちらか片方が必ず不幸になるので、家族は同じ年に結婚してはいけないというジンクスが出てきていたが、本作でも同じジンクスが登場してくる。弟よりも先に姉の誰かが結婚してしまえば、同じ年に弟が結婚するわけにはいかないというジンクスを利用して、弟の結婚を阻止しようとするのだ。
　なるほど、フィリピンには本当にそういうジンクスがあったんだ。
　こうして何本もフィリピン映画を観ていくと、そうしたことも分かってきて、なかなか面白いとか思ってしまうのだった。