ラーマーナンド　踊る大魔神

　このところ、すっかりインド映画にはまってしまっているのだけれど、ビデオで新作を見ていて、とんでもない作品にぶちあたってしまった。勝手に邦題をつけるとしたら、『ラーマーナンド　踊る大魔神』。いやはや、日本の誇る特撮時代劇の傑作、『大魔神』のパクリなのである。

　主役は『ムトゥ　踊るマハラジャ』『アルナーチャラム　踊るスーパースター』のラジーニカント。このラジーニカントが村人から大変に慕われている実力者であるという場面から映画は始まる。『アルナーチャラム　踊るスーパースター』とほとんど同じようなオープニングだ。もちろん、村人一同歌い踊る。例によって、ラジニカーントのド派手な決めのポーズとニッコシ笑顔も乱発され、肩にかけた手拭いが振り回される(^^;　こういうポーズとか動きが実にさまになる。さすがはスーパースターだ。

　このラジーニカントが村の面倒をみているのだが、村にはもうひとつ、ラジーニカント同様に慕われ崇められる存在があった。それは村の奥の滝のすぐそばにある巨大な石像、ラーマーナンドであった。ラジーニカントは村人たちのしあわせな生活を守り、村人たちはそのしあわせをラジーニカントとラーマーナンドに感謝するのであった。
　で、当然ながらこの石像の前で歌い踊る場面があるのだが、たぶん「俺たちがしあわせでいられるのも、ラジーニカントとラーマーナンド様のおかげです」ってな内容の歌詞なんだろう。
　しかし、笑ってしまうことに、このラーマーナンドの石像、ラジーニカントにそっくりなのである。

　ところがその村に工場建設の話が持ち上がり、都会から大企業の人間が村にやってくる。これが、『ミスター・インディア』のアムリーシュ・プリー（思わず「ハイル・モガンボ！」と敬礼したくなっていまう。相変わらず悪い役が似合うなあ）。彼らは村人の意向などおかまいなしで、強引に計画を押し進める。ラジーニカントはあれやこれやと手を尽くして工場建設の妨害をしようとするのだが、都会から来たならず者たちに多勢に無勢で叩きのめされてしまう。

　そして（たぶん）工場のための発電施設に滝の水力を利用しようということになり、アムリーシュ・プリーは滝の横の石像を破壊することを決定し、それを防ごうとする村人たちが滝のところに集結する。そこで攻防戦が繰り返されるのであるが、ついには村人たちは蹴散らされてしまう。大怪我を負う村人たち。その光景にラジーニカントの怒りが爆発する。
「ラーマーナンドよ。あなたを救うために皆が怪我をした。それを見捨てるのか！」
　（たぶん）そんなことを石像に向かって叫んで、敵の中に躍り込んでいくのだ。そして、ラジーニカントがあわやという瞬間に、石像、ラーマーナンドの腕が動き、顔の前を横切ると、それまでにこやかな笑顔をたたえていたラーマーナンドの顔が鬼神のような怒りの表情に変わるのだ。地響きをたてて滝の中から全身の姿を現す巨大な石像（ラジーニカントの一人二役だ！）。
　村人たちはついにその全貌を現したラーマーナンドの前で歌い踊り、ラーマーナンドも地響きをたてつつ踊るのだ（うーん、ちゃちな合成だぞ）。
そして、ひと踊りしたところで悪党征伐を開始し、襲い来るクレーンやブルドーザーをなぎ倒すのだ……。

　いやはや、おそるべしインド映画。ほとんど、なんでもありの世界ではないか。合成はちゃちだが、それでも充分に楽しめるぞ……。なんでも、日本では来年の正月映画として、公開が予定されているとか。