フライング・バトル

ゴールデン・ハーベスト社が倒産！　突然飛び込んできたその知らせに、僕は愕然とした。ゴールデン・ハーベストといえば、香港最大手の映画会社である。日本でいえば東宝にあたる会社だ。ジャッキー・チェンの主演作をずっと作ってきた会社でもある。それが倒産したとなると、香港映画は壊滅？　まさか……。 　しばらくして、映画製作部門の一部が閉鎖されただけらしいと分かったが、いやはや、人騒がせなニュースだ。 　そのショックから立ち直るためにも、今回はとにかく元気で楽しい作品を取り上げることにしよう。『フライング・バトル』。人気俳優が何人も顔を揃えた、なんともにぎやかな時代活劇コメディだ。 　レオン・カーファイとジミー・リン（可愛い！）の２人組は凄腕の賞金稼ぎだ。だが、チョン・マンとグロリア・イップ（可愛い！）の美人姉妹にあっさりと賞金を横取りされてしまったりもしている。ある時、この４人は九尾の狐（ジャッキー・チョン）と飛天猫（マギー・チョン）の妖怪夫婦を捕えに行くことになるのだが……。 　このジャッキーとマギーの２人がすごい。アジアを代表する実力派歌手と、『宗家の三姉妹』等で知られる実力派女優の２人が、とことん妖怪になりきって、縦横無尽のアクションを見せてくれるのだ。これがもう実に楽しい。香港アクション映画のテクニックのすべてを叩き込んで描く妖怪の夫婦喧嘩って、想像できます？ 　監督は台湾でただひとり、徹底した娯楽映画を撮り続けているジュ・イェンピン。アクションシーンの素晴らしい仕上がりと、オバカな内容とがみごとにマッチした快作なのである。

1993年／ビデオ＝東映ビデオ、16,000円