ロンゲストナイト

一時期、マカオの治安が悪化しているという話をあちこちで耳にした。ポルトガル領マカオは今年の12月20日に中国に返還されることになっているのだが、その前にマカオの利権を確保しておこうという香港や台湾の黒社会組織が入り乱れ、激しく抗争を繰り広げたらしいのだ。その様子は映画『欲望の街 古惑仔�U 台湾立志伝』でつぶさに見ることができるが、現実でも映画そこのけの血なまぐさい事件が起きていたというわけだ。 　本作は、マカオにおけるそうした黒社会同士の抗争を背景としたサスペンスである。 　互いに激しく争う２つの組織。その一方のボスの首に多額の懸賞金がかけられたという噂が流れる。だが、この２つの組織は和議を進めている最中であった。ならば、誰が噂を流したのか？　高まる緊張の中、謎に包まれたスキンヘッドの男（ラウ・チンワン）がマカオに姿を現し、悪徳刑事サム（トニー・レオン）を悪夢のような迷路へと追い込んでいく……。 　途中までは何が起きているのかほとんど分からないままにストーリーが進む。だが、それらはすべて、サムを陥れるために周到にしかけられた罠なのだ。この脚本が実にうまい。また、光と影を効果的に使った映像も実に素晴らしい。そして、罠にからめとられていくトニー・レオン、たんたんと計画を進めるラウ・チンワン、この２人の役者が実にいい。トニー・レオンの焦燥感とラウ・チンワンの圧倒的な存在感とがサスペンスを目いっぱい盛り上げているのだ。はりめぐらされたすべての罠が閉じる瞬間の驚愕！　ぜひとも体験していただきたい。 　監督は『パラダイス！』のパトリック・ヤウ。要注目の監督である。

1997年／ビデオ＝アスク、16,000円