新・少林寺伝説

1998年の香港映画界の決算資料がようやく出た。１年間に公開された作品は96本（一部のポルノ映画を除く）で、その興業収入金額の合計が約4億1600万香港ドル（約67億1500万円）。最盛期には180本近い作品が作られ、興収も楽に12億香港ドル（約193億7000万円）を越えていたことを考えると、ため息の出るような数字だ。しかも、老舗のゴールデン・ハーベスト社が撮影スタジオを閉鎖してしまうなど、さらに厳しい状況が続いており、ファンとしては実に気掛かりでならない。 　だが、どのような事態になろうとも、この男がいるかぎり香港映画は大丈夫だ、そう思わせる力強い人物がひとりいる。バリー・ウォン。監督としてプロデューサーとして数多くのヒット作を生み出してきた彼は、不況などなんのその、相変わらず元気のいい映画を作り続けている。 　香港版「子連れ狼」とも呼ばれる本作は、そのバリー・ウォンが監督した時代活劇である。清朝政府を敵にまわし、幼い息子とさすらいの旅を続ける少林拳の達人を演じるのは『リーサル・ウェポン４』のリー・リンチェイ。この父と子を主人公にした本作に、バリー・ウォンは娯楽映画の要素をことごとく叩き込む。 　父の突き出す槍の上を息子が駆け抜けて敵に立ち向かうという派手なアクション！　バットマンカーのような鋼鉄の乗り物に入って襲いかかる不死身の宿敵。たっぷりと注ぎこまれたしょうもないギャグ。 　シリアスな活劇映画に撤すれば、より完成度の高い映画になったであろうが、バリー・ウォンは完成度よりも面白さを優先する。徹底した娯楽至上主義、それこそがバリー・ウォンの身上であり、香港映画の真骨頂なのだ。

1994年／ビデオ＝ビームエンタテインメント、3,800円