上海グランド

2月19日から「ゆうばり国際冒険・ファンタスティック映画祭」が始まる。第10回目となる今回、香港からはアクションスターのドニー・イェンが新作の『バリスティック・キス』をひっさげてやってくるし、韓国の『八月のクリスマス』『ザ・ソウル・ガーディアンズ−退魔録−』、インドの『ジーンズ』なども話題を呼ぶことだろう。 　いま、アジアの中では韓国とインドの映画界がとても元気なのだが、その息吹をいちはやく取り込んだプログラムが実に素晴らしい。東京にいてこの映画祭に参加できない筆者としては、うらやましいかぎりだ。 　さて、今回紹介するのは、香港のトップスター、アンディ・ラウとレスリー・チョンの競演が話題となった1996年の作品である。 　1930年代の上海。そこではギャングたちが血で血を洗う抗争を繰り広げていた。台湾反日同盟の闘士ホイ（レスリー）は、日本軍の手を逃れてこの魔都に辿り着き、暗黒街のトップをめざすチンピラのリク（アンディ）と出会う。 　２人はやがて固い友情に結ばれ、ともに暗黒街でのし上がっていくのだが、ある誤解から対立するようになり……。 　というわけで、２人の男の野望を、友情を、愛を、たっぷりと描いたスケールの大きな作品なのである。なんといっても、当時の上海を再現した美術が素晴らしい。いや、それ以上に実力、人気ともに頂点にある二大スターの火花を散らす競演がスリリングなのだ。監督はプーン・マンキッ。製作はツイ・ハーク。 　少々（というか、大いに）血なまぐさいシーンもあり、それに辟易する人もいるだろう。しかし、そういった場面すらパワフルに描いてしまう容赦のなさも香港映画の魅力なのである。

1996年／ビデオ＝ポニーキャニオン、16,000円