君さえいれば　金枝玉葉

相変わらず香港映画人のハリウッド進出が続いている。最初のうちは、中国返還による将来の不安から香港を離れるのだろう、などと言われていたが、とんでもない。世界で通用する実力の持ち主であったからハリウッドでも映画が撮れた、ただそれだけのことなのだ。 　そしていま、『ラヴソング』『月夜の願い』といった素敵な作品を世に送り出してきたピーター・チャン監督も、その実力を認められてアメリカで新作に取り組んでいる。なんと製作はスティーヴン・スピルバーグ！　楽しみだなあ。 　本作はそのピーター・チャン監督が、アニタ・ユン、レスリー・チャン、カリーナ・ラウという３大スターを起用して撮ったロマンティック・コメディの傑作だ。 　人気歌手のローズ（カリーナ）に憧れるウィン（アニタ）は、ローズに近づきたい一心で男装して男性歌手募集のオーディションに応募し、ひょんなことから合格してしまう。そして、女であることを隠して売れっ子プロデューサーのサム（レスリー）と同居することに。ところがサムは、男であるはずのウィンが気になって仕方がない。愕然とするサム。「えっ、オレってゲイだったの!?」 　かくして３人の恋愛模様が描かれるのであるが、なんといっても本作の最大の魅力は、アニタ・ユンの天真爛漫な少年ぶりなのである。実に実に可愛らしいのだ。こんなに愛らしい少年ならば、サムならずとも気にかかるだろうし、ローズならずともちょっかいを出したくなるというものだろう。本作でアニタ・ユンは香港アカデミー賞の主演女優賞を獲得しているが、それも当然の好演なのである。 　来春には続編の日本公開も決まっている。これまた、楽しみだなあ。

1994年／ビデオ＝アスミック、14,800円