つきせぬ想い

ミス香港コンテストが始まると、香港は異様な熱気に包まれる。なぜか、モーレツに盛り上がってしまうのだ。誰が優勝するのかという予想が街中をとびかい、出場者の過去のゴシップやら整形手術の疑いありなんて記事が、連日マスコミをにぎわせることになる。 　そして、このミス香港コンテストからは、多くの芸能人が誕生している。当然ながら、映画界にもミス香港出身の女優がたくさんいる。その中で最も注目すべき女優は、1990年のミス香港、アニタ・ユンだ。 　このアニタ・ユン、1992年に映画デビューするやいなや、その年の香港電影金像奨（香港のアカデミー賞）の新人賞を受賞。翌年は本作で、その翌年には『君さえいれば／金枝玉葉』で連続して主演女優賞を受賞。一瞬にして香港映画界のトップ女優となってしまったのである。 　お勧めしたいアニタ・ユン主演映画はいくつもあるのだけれど、まずは本作をご覧いただきたい。明るく元気な下町娘が不治の病に倒れて……という香港には珍しいベッタベタのお涙頂戴モノなのであるが、この上もなく愛らしいアニタ・ユンの姿に魅了されたならば最後、ラストシーンでボロボロに泣かされてしまうこと間違いなしという作品なのである。筆者などすでに何度もこの作品を観ているというのに、そのたびに泣かされて泣かされて……。 　監督は『フル・スロットル』のイー・トンシン。丁寧な脚本と手堅い演出で知られる監督だ。この監督の演出と、アニタ・ユンの愛らしさというダブルパンチに涙腺を攻撃されたならば、誰だってノックダウンをくらってしまう。ハンカチを用意せずには見ることのできぬ、名作中の名作なのである。

1993年／ビデオ＝ポニーキャニオン、2,980円