男たちの挽歌

香港での1997年度の興行収入ベストテンの結果が発表された。１位はスピルバーグの『ロスト・ワールド』。２位が今年のゆうばり国際映画祭でも上映されるジャッキー・チェン主演の『ナイスガイ』。３位がチャウ・シンチー主演のコメディ『食神』。チャウ・シンチー主演作は４位、８位にも入っており、相変わらずの人気者だ。５位はリー・リンチェイ主演のクンフーアクション。そして第６位が、ジョン・ウー監督の渡米第３作、『フェイス／オフ』。 　この作品は、実はジョン・ウーが香港で撮った作品の集大成となっている。彼の過去の作品の中で見たことのある場面が続々と登場してくるのだ。そして、その原点ともいうべき作品が86年に作られた『男たちの挽歌』なのである。 　かつて黒社会の顔役であったマーク（チョウ・ユンファ）とホー（ティ・ロン）。だが、罠にかけられたホーは刑務所に入れられ、マークは負傷して組織の中での立場を失う。再びのし上がることを夢みて、ホーの出所を待つマーク。だが、警察官になった弟（レスリー・チャン）のために、ホーは足を洗うことを決意していた。 「お前を待っていたんだ！」。ホーにつめよるマーク。「あんたのせいでオレは出世もできない！」ホーにつめよる弟。それを必死に耐えて堅気になろうとするホー。だが……。 　単なるギャング映画と言うなかれ。そこで描かれる男と男の友情、兄弟の愛憎はとてつもなく熱いのだ。 　ジョン・ウーもチョウ・ユンファも、すでに活動の拠点をハリウッドに移し、香港にはいない。しかし、彼らの作った本作こそが、香港映画の最も熱い時代を築きあげたのだ。『フェイス／オフ』公開の前に、ぜひともご覧いただきたい。

1986年／ビデオ＝バンダイビジュアル、3,800円

メモ 　この「香港電影館」は隔週の土曜日の夕刊に掲載されていたのだが、この原稿の載った１月31日は、実は「香港電影館」の掲載されるはずの週ではなかった。ところが、何か事情があったらしく、突然の連絡で「あさってまでに原稿をなんとか書けませんか？」と言ってきたのである。通常ならば、けっこう時間をかけて書いている原稿なので「そんな無茶な」と言うところである。が、なんとタイミングのいいことに、『男たちの挽歌』のビデオが再発売されたのである。しかも、まさか廃盤になっているとは思いもせずに、以前に『男たちの挽歌』を紹介するつもりで書き上げてあった原稿がすでに手元にあったのですね。「うーん、ちょっときついけれど、でも、なんとかしましょう」なんて、かなりもったいぶって、恩着せがましく引き受け、とっくに書き上げてあった原稿を提出したのでありました。いやあ、担当さんの感謝すること（笑）