ドラゴン危機一発'97

1973年、ブルース・リーがこの世を去ってから、早くも24年の歳月が流れた。その間、香港映画界はブルース・リーの後を継ぐべき人物をずっと探し続けていた。そして、ジャッキー・チェンやリー・リンチェイといった素晴らしいアクションスターを世に送り出してきたわけであるが、しかしこのふたりもブルース・リーの後継者と呼ぶにはあまりにもタイプが違っていた。ブルース・リーが唯一無二であるその最大の魅力は、見る者を引きつけてやまないその強烈なカリスマ性であり、スーパースターのみが放つまばゆい光芒なのだ。 　そして今、とうとうブルース・リーの真の後継者たるべき人物が登場してきた。その男の名は、ドニー・イェン。『ドラゴン怒りの鉄拳』をリメイクしたＴＶシリーズでブレイクした彼は、主演、監督、脚本、製作、武術指導をすべてこなした本作において「自分こそブルース・リーの後継者である」と世界中に宣言したのだ。 　とある寒村に現れた記憶をなくした男。すご腕の男たちが次々と現れて、その男に襲いかかる。だが、なぞの男は鍛え抜かれた肉体ひとつを武器に、襲いかかる男たちをかたはしから叩きのめしていく。はたして、その男は何者なのか？　なにゆえ命を狙われるのか？ 　初監督作品とは思えぬテンションの高い作品である。とりわけ、アクションシーンの充実度は目を見張るばかりだ。しかも、ドニー・イェンのアクションがひたすら美しい。鞭のようにしなる肉体が繰り出す蹴りの素晴らしさ。野獣のようななめらかな身のこなし。これこそ、ブルース・リーの再来と納得することだろう。

1997年／ビデオ＝ビームエンタテインメント、15,800円