『ドラゴン・イン』

本来ならば心ときめかす話題作が何本も劇場にかかり、観客が続々と映画館に押し寄せるはずのサマーシーズン。だが、今年の香港はいささか様子が違っていた。チャウ・シンチー主演の『算死草』はまったくの期待外れに終わり、結局は『迷失世界（ロスト・ワールド）』の独り勝ち。残念なことに、このところの香港映画は低調なのである。 　ま、それはさておいて、今回はレイモンド・リー監督の傑作時代活劇を紹介しよう。原題は『新龍門客棧』。龍門客棧という名前の宿を舞台にした『残酷ドラゴン／血斗！竜門の宿（原題：龍門客棧）』のリメイク作品で、旧作に比較すると現代的なスピード感あふれる快作に仕上がっている。 　時は明朝景泰年間（1450年代）。政府の目の届かぬ辺境の地では、東廠と呼ばれる宦官の一派が権力を欲しいままにしていた。女剣士のモウ（ブリジット・リン）は、その東廠から大臣の子息を救い出し、砂漠のただ中に建つ一軒の宿「龍門客棧」で恋人（レオン・カーファイ）と合流する。だが、東廠の放った追っ手も同じ宿に姿を現す。身分を偽り、互いに探り合いを始める両者。金儲けの匂いをかぎつけた宿の女主人（マギー・チョン）もそこに加わり、次第に緊張感が高まっていく…。 　最大の見せ場はクライマックスの大チャンバラシーンだ。とにかく、迫力が凄い。宿の中を縦横無尽に飛び交いつつ剣をまじえ、ついには砂漠に飛び出して全力疾走しながらの剣戟シーンが展開されるのだ！ 　このチャンバラシーンを見てしまうと、きっと日本の時代劇が生ぬるく感じられてしまうことだろう。ぜひともお試しあれ。

1992年／ビデオ＝アミューズビデオ／16,000円