ゴッドギャンブラー３

香港が中国に返還されて、早くも３週間近くがたった。その間に香港映画界にいかなる変化が生じたかというと、これが見事に何もなし。ポルノ映画の上映は相変わらずだし、同性愛を題材にしたウォン・カーウァイ監督の『ブエノスアイレス』の上映も続いている。男同士のセックスシーンというセンセーショナルな場面で始まるこの映画、いかにも中国政府からにらまれそうな作品なのだが…。 　ところで、中国に返還されて「困ったあ！」と叫んでいる俳優がいる。香港ではジャッキー・チェンと人気を二分するトップスター、チャウ・シンチーだ。彼は「北京語がしゃべれない〜！」と言って困っているのであるが、この発言、本音半分サービス半分といったところだろう。なにせ彼の作品、どれもこれも言葉の壁を越えて大笑いできる軽快なコメディばかりなのだ。例えば、本作。 　賭聖の異名を持つ男、シン（チャウ・シンチー）。かつてギャンブルの勝負で叩きのめした相手から襲撃を受けた彼は、超能力を駆使したバトルの末に、1937年の上海へとタイムスリップしてしまう。そして、ひょんなことから上海の顔役、ディンと友情を深めるのだが、そこへ男装の麗人、日本軍の女スパイ川島芳子が乗り込んでくる。なりゆきから、上海の未来を賭けて川島芳子とのギャンブル勝負に挑むことになるシン。果たして、勝負の行方やいかに！ 　「いかに！」ったって、主人公が勝つに決まってるんだけど、そこに至る展開が実に楽しい。チャウ・シンチーという俳優の魅力がいかんなく発揮されているのだ。いやあ、面白い。これだけ面白ければ、北京語がしゃべれないくらいで誰が困るもんですか。ねえ。

1991年／ビデオ＝徳間ジャパン、15800円

メモ 　実はこの４回目、チョウ・ユンファ主演の『男たちの挽歌』をとりあげる予定で、原稿もすでに書き上げてあった。ところが、なんと『男たちの挽歌』はこの時すでに廃盤で、急遽差し替えとなってしまったのである。いや、あせったあせった。 　また、『ブエノスアイレス』について「ゲイを扱った」と書いたら担当編集者から「ゲイという言葉は避けてほしい」というよく理由の分からないクレームがついて「同性愛を題材にした」と書き直し、文末に（笑）とつけたら「そういう文章はあまり好きじゃないんで、やめてください」という注文がついて直したりで、けっこう大変だったんですよね。 　ところが、担当編集者が代わるととたんにそういう注文がなくなったんで、あれは新聞社の方針じゃなくって、単なる編集者の好みだったんだなと分かった次第（笑）