テラコッタ・ウォリア

カンヌ映画祭に出品されるはずだったチャン・イーモウ監督の新作が、突然上映中止となってしまった。理由はよく分からないのだが、中国サイドが出品を許可しなかったらしい。まったくもう。きっと香港の映画人たちも、大きなため息をついていることだろう。中国という国は、表現するということに非常に神経質な国なのだけれど、香港映画に対しても神経をとがらせることになるのだろうか。うーん、ちょっと不安。 　ま、それはさておき、今回はそのチャン・イーモウ監督が主演したアクション映画を紹介しよう。そう、中国を代表するあのチャン・イーモウ監督が、俳優として大活躍するアクション映画が香港にはあるのです。 　物語は秦の始皇帝の時代に始まる。始皇帝の逆鱗に触れた主人公（チャン・イーモウ）が、皇帝の墓を守る俑(土人形)として生き埋めにされてしまうまでが前半。ここまでは、非常にロマンティックな雰囲気で展開する。ところが、不死の身となっていた主人公は、1930年代の上海によみがえり、輪廻転生を繰り返していたかつての恋人（コン・リー）を守るため、さらには盗掘団から始皇帝の墓を守るため、鬼神のごとき闘いを繰り広げるのだ。いやあ面白い。この後半になると、一気に娯楽大作としての全貌をあらわにし、怒濤のごとく派手な活劇シーンが展開されるのだ。 　監督は「チャイニーズ・ゴースト・ストーリー」などで知られるチン・シウトン。流麗なアクションを撮らせたら世界一だと思う。 　本作のロケは中国大陸で敢行された。なにせ、無限の大地と、格安の人件費で雇える無尽蔵のエキストラ。先行きに不安はあれども、スケールの大きな作品にとって、中国大陸はパラダイスでもあるのだ。

1989年／ビデオ＝徳間ジャパン、14800円